作中台詞集・2黒月の森

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エリィとの出逢い
 
エリィ Lan ahame!
Akarta' i Ayiqbund Atna' nayijirtad wa A' adaw' i day Atn' aqwaf!
wal nah lan A' adahk Ana fa' Rannaqalta'i!

…!
武器を捨てなさい!
おかしな真似をしたら、撃つわよ!
エリィ 「 う、後を向いて!
フェイ 「 …………………………
エリィ 「 後を向きなさいっ!
フェイ 「 ……震えているのか?
エリィ 「 黙って!
……追撃してきたキスレブ兵ではないようね。
……でも……
「 動かないで!
任務中に接触した地上人 <ラムズ> は誰であれ消去せよと命令されているのよ。
悪く思わないでね。
……一つだけ尋ねるわ。
この樹海の出口はどこ?
フェイ 「 あんた……迷ったのか?
エリィ 「 質問にだけ答えて!
どうすればこの森から出られるの?
フェイ 「 悪いな。
俺も出口を探してる口なんだ。
エリィ 「 そう……
フェイ 「 いつまでそうしている?
俺を撃つんじゃなかったのか?
撃つのなら早くしてくれ。
エリィ 「 お、おかしなことを言うわね。
あなた、自分の置かれている立場がわかっているの?
フェイ 「 立場なんてどうでもいいんだ。
どうせ俺は生きている価値の無い男だから……
エリィ 「 こ、来ないでっ!
フェイ 「 どこを撃っている?
ここだ、ここを撃ってくれ。
さあ……
エリィ 「 ば、馬鹿にしてっ!
あなた変よ!
どうかしている!
少しは抵抗なさいよっ!
エリィ 「 な、何?こいつ!?
フェイ 「 !
やめろーっ!
“エリィ” に手を出すなーっ!
フェイ 「 おい!
しっかりしろ!
フェイ 「 気がついたみたいだな。
なかなか起きないから心配したよ。
エリィ 「 ……………
フェイ 「 どうだい、具合は?
エリィ 「 ……………
フェイ まだ俺を殺すつもりか?
だったら好きにしてくれ。
ただ、この森ではよした方がいい。
森の獣は大きな音に敏感なんだ。
エリィ 「 ……………
フェイ 「 まあ、いいや。
話したくないならしなくてもいいよ。
ただケガの手当の礼くらい言ってもバチはあたらないと思うぜ?
エリィ 「 !
あ……ありがと……
で、でも、だからって私に恩をきせようとしたってだめよ。
もちろん命ごいにも応じられない。
その手にはのらないんだから……。
フェイ 「 何をそんなに恐がっているんだ?
エリィ 「 べ、別に恐がってなんかいないわ。
警戒してるだけよ。
怪しい地上人 <ラムズ> に会ったんだもの当然じゃない。
フェイ 「 何もしやしないよ。
それに俺よりも、あんたの方がよっぽど怪しい格好だ。
エリィ 「 なっ……
フェイ 「 あんた名前は?
エリィ 「 ラ……地上人 <ラムズ> に名乗る名前は持ち合わせていないわ。
フェイ 「 何だ、そのラムズって?
俺達はどちらも樹海で迷ってるんだ。
ここにはやばいモンスターも多い。
樹海を抜けるまではお互いに協力した方がずっと安全だ。
違うかい?
エリィ 「 ……
フェイ 「 よし。
で、あんた名前は?
これから二人で協力していこうっていうんだ……お互い名前も知らないんじゃやりにくいだろ。
俺の名前はフェイだ。
エリィ 「 エ……、エレハイム。
両親はエリィって呼ぶわ。
フェイ 「 ああ、そうか。
そうだったよな、“確か”。
エリィ 「 ??
フェイ 「 とにかく、夜やたらと動き回るのは危険だ。
明日、陽が昇ってから出口を探そう。
それでいいか?
エリィ 「 それしかないようね。
いいわ、それで。
フェイ 「 よし、エリィ。
まずは腹ごしらえだ。
 
 

《MEMO》
ムービーでエリィが辿々しく喋る言語はソラリス公用語。アラビア共通語 (フスハー) で訳したものをアルファベットに変換後、逆さにドイツ語読みをしたものとなっている。
ムービーの発音を片仮名にすると「ラン アハス! ガルティナ ユタクトゥ ワ ダイアナトゥナ アクワ! バルナランラッダク ラナ カルティェ!」というニュアンスか。「止まりなさい! ゆっくりと武器を捨てて手を上げて! おかしな真似をしたら撃ちます!」の意。

初回プレイでは、初めて出逢ったはずのフェイがエリィの名を呼ぶところで「?」となる台詞。
この会話からはユーゲント教育を受けながらも兵士としてむしろ弱みを見せている、軍人慣れしていないエリィの様子が伺える。

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憤り
 
エリィ 「 ねぇ……
昨日言ってたでしょ?
俺は生きている価値がないって。
あれってどういうこと?
フェイ 「 なぜそんな事を聞くんだ?
エリィ 「 え?
だって、あの時のあなたってまるで自殺志願者のような顔をしてたもの。
気になるでしょ?
そんなこと言われたら。
どうしてこの樹海の中をさまようことになったの?
フェイ 「 そういうエリィは何故ここに?
エリィ 「 えっ?
わ、私は……
フェイ 「 俺は……逃げて来た……村から……逃げて来たんだ……。
エリィ 「 村?
村って……まさか……
フェイ 「 この樹海と山頂の間にあるラハンって村さ。
そこから逃げてきたんだ。
エリィ 「 あの村に……!?
フェイ 「 のどかな、いい村だった。
村のみんなは、よそ者の俺にも家族同然に接してくれた。
それがあの夜、何機ものギアが突然降りてきて戦闘を始めたんだ。
村は火の海になってしまった。
俺は村のみんなを救おうとして、放置されてたギアに乗った。
動かし方も知らないのにな。
ただそうすればなんとかなると思った……いや……そうしろと誰かがささやいたんだ。
そうしろって……。
けど、結局なんともならなかった。
村は……
エリィ 「 キスレブ軍に壊滅させられた?
フェイ……?
フェイ 「 ……そうじゃない。
村を壊滅させたのは……俺さ……。
エリィ 「 !?
フェイ 「 そう。
俺がこの手で破壊したんだ。
きっと……
エリィ 「 ……破壊したって、どういうこと?
村の人達を助けようとしたんじゃなかったの?
フェイ 「 助けようとはしたさ。
実際、村を襲ってたギアの何機かは倒せたんだ。
でも、すぐに新手のギアから激しい銃撃を受けて……
そして友達が……、ティモシーが流れ弾にやられたんだ……。
俺は目の前が真っ白になって……
それから後のことはよく覚えていない。
機体が暴走した……って先生は言ってた。
気がついた時には村も村人も……。
アルル……。
いい奴だったんだ、アルルもティモシーも……みんな……
エリィ 「 機体の暴走って……ギアの?
それで村が?
フェイ?
フェイ 「 ……そうだ、ギアだ!
最初に現れたあのギアさえ村に降りなければこんなことには……!
エリィ 「 !
 
……クソッ、まだ追って来やがる。
アヴェ領内に入ったのにあきらめねえ。
……よっぽど、このギアが大事

……チッ、このままじゃ不利だ。
……ヴァンホーテン!
……どうした、応答しろ!
エリィ 「 ひ、被弾……右上背部に被弾。
スラスター出力減少。
高度、維持できません。
……クソッ、全機降下だ。
地上で展開。
応戦するぞ!
 
フェイ 「 奴等が村に来なければ、戦闘を始めなければ、俺はギアに乗ることもなかった。
村のみんなを巻き込むことだってなかったんだ。
そうだ、全て奴等のせいだ。
俺は悪くない。 悪いのは奴等だ。
奴等さえやってこなけりゃこんなことには……奴等さえっ!
奴等さえ!
奴等さえ!!
奴等さえ!!!
エリィ 「 いい加減にしてっ!
フェイ 「 !?
エリィ 「 あなた卑怯よ!
フェイ 「 卑怯?
俺が?
エリィ 「 だってそうでしょ?
さっきから聞いていれば奴等、奴等って。
あなた自分には何の責任も無いって言い方してるじゃない!
フェイ 「 俺に責任なんて……
エリィ 「 あるわ!
たしかに村での戦闘の直接の原因はその……ギアが不時着したことかもしれない。
でもキスレブの目標はあくまでそのギアでしょ?
村を侵略しに来たって訳じゃないわ。
それをあなたがギアに乗って応戦なんてするから被害が拡がったんじゃないの!?
フェイ 「 ……………
エリィ 「 だいたい、どうして乗れもしないギアに乗ろうなんてしたのよ?
あれは誰もが扱える機械じゃないのよ!
訓練も受けていない民間人が乗ってちゃんと動かせる訳無いじゃない!
それに、もっと他に……村の人を避難させるとか、何かやることがあったはずでしょ?
なのに自分で敵をあおっておいてそのあげく、出た被害は全て不時着したギアのせい?
どうしてその責任を自分で背負おうとしないの?
どうして他人になすりつけようとするのよ?
そんなのただの逃げじゃない!
あなたは卑怯だわっ!
フェイ 「 ああ、そうかもな……そうさ……、俺は卑怯者なんだよ。
そんなことは最初からわかってるさ。
自分の力量も知らないで、結果を他人のせいにして泣き言を言ってるだけの情けない男さ……
だけど……あの時、なぜだか無性に血が騒いでどうしようもなかったんだ!
自分でも他にどうしようも……
エリィ 「 フェイ、わ、私……
フェイ 「 うるさい!!
お前に何が解る!?
気がつけば周りはガレキの山、何が起ったか、自分が何をしたかなんて全く憶えちゃいない。
なのにこの手にだけはハッキリと感触として残っているんだ。
悲鳴が、血の臭いが、骨の砕ける音が、俺を呪う声が、ギアの分厚い隔壁さえ貫いて伝わって……
見ろ!
この手を!
お前にこの感触がわかるってのか!?
声が聞こえるってのか!?
自分の手で村を破壊した俺の気持ちが……遺された子供達を前にして何もしてやれなかった俺の気持ちが……
俺にはもう帰るとこさえ……誰も……
乗りたくて乗ったんじゃない……仕方なかったんだ……あの時は仕方なかったんだよ……
 
 

《MEMO》
責任の擦り付けあい & 詰り合い。この計画内ではヴェルトールの操縦者ではない、一兵士に過ぎなかったエリィを仲間が切り捨てなかったのは、ソラリス高官であるエーリッヒ・ヴァン・ホーテンの娘故か。
ここでの「責任」についての会話は、物語終盤へ向けての伏線となっている。

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野営
 
シタン 「 ダメだな。
膝のアクチュエーターとバイパス回路が、完全にイカれてしまっている。
アクチュエーターはともかく回路の方は交換パーツがないと……。
おや?
寝付けませんか?
エリィ 「 あ……
シタン 「 無理もない。
昼間あんな事があったばかりですからね。
村が襲われた時、フェイが乗った機体です。
そういえば一機だけ、村の外れに放置されていた機体がありましたね……
ニル バイア ダース レグス? (あれはあなたのものですか?)
エリィ 「 !
シタン 「 やはりそうでしたか。
ラハンへ不時着したギア、姿を消したパイロット、それらと時を同じくして樹海をさまよう謎の少女……。
これらの関連性が無いなずがない。
加えてその格好、どう見たって軍属のものですよ……違いますか?
エリィ 「 どうして?
あなたは一体……
シタン 「 ラハンの戦闘の犠牲になった兵士達のIDタグを見たんですが……そこにあったデザインが、貴方の服についているものと同じだったんですよ。
エリィ 「 !
シタン 「 手厚く葬っておきましたから心配いりません。
もっともここは異国の地だから彼等としては不服でしょうけど。
エリィ 「 そう……ですか。
シタン 「 フェイは貴方のことは?
エリィ 「 多分、気付いていないと思います。
シタン 「 でしょうね。
フェイはラハン以外の世界を知りませんからね。
エリィ 「 あの……
シタン 「 ……ま、いいでしょう。
お互い深い詮索は無しということにしておきましょうか。
エリィ 「 でも……
シタン 「 私は、ただ他の方々より少しばかり世間に詳しいだけですよ。
ところで、エリィ。
折り入って貴方にお願いがあるのですが……
エリィ 「 ……何か?
シタン 「 この先を真っ直ぐ抜ければ街道に出ます。
このまま……フェイが眠っている間に我々の元を去って頂けませんか?
エリィ 「 !?
シタン 「 フェイの周りで何やら良からぬ事が起こりつつあるような気がするのです。
出来ることなら守ってやりたい……不毛な争いに巻き込まれて欲しくないのですよ、彼には。
それにこれは貴方の為にも言っているんです。
エリィ、貴方はこんな所にいるべき人ではない。
国の御家族のもとへお帰りなさい。
エリィ 「 あの……、私……
シタン 「 心配しなくても、フェイにあなたの正体を明かすような事はしませんよ。
適当に……家族が迎えに来たとでも言っておきますから。
エリィ 「 違うんです!
私、フェイにひどい事を……だから、彼に……その……
……ごめんなさいと……伝えてほしいんです。
シタン 「 ひどい事?
エリィ 「 フェイから聞いたんです。
私達が来たことが原因で村が潰滅したって。
フェイは、奴等さえ来なければ……と。
それで私、自分が責任の重圧から逃れたいばっかりにフェイに卑怯だって言ってしまったんです。
私があの村に不時着さえしなければ、村は平和なままでいられたはずです。
無関係の人達を巻き込むこともなかった。
なのに私……
シタン 「 珍しい方ですね、貴方は。
あそこの人間はそういったものの考え方はしなかったはずです。
彼等にとって地上の人間は家畜同様……
エリィ 「 『牧羊者 <アバル> は地上人 <ラムズ> を管理統制し、その生殺与奪の権利も持つ……』
シタン 「 そう、それだ。
なのに貴方はフェイやラハン村の人々に対して責任を感じている。
なぜです?
エリィ 「 自分でもわかりません。
私はユーゲントで、地上人は愚かで野卑なものと教わりました。
だから我々が管理する必要があると。
……でも……
シタン 「 実際にフェイと出会って感じたものはそれとは違っていた?
エリィ 「 ええ。
私達となんら変わらない……むしろ、たくましくさえ感じました。
私達が持っていない何かを持っているような……それに、私なんかの為に二度も身を挺して戦ってくれた。
シタン 「 あそこの人間は普通、そういった行為を受けることをも恥とするはず。
しかし貴方はフェイに感謝している。
エリィ 「 多分、父の影響もあると思います。
父は地上人に寛容でしたから。
私の乳母は……地上人なんです。
外には隠していましたけど。
それに……私にもフェイと同じ……
シタン 「 同じ?
エリィ 「 い、いえ。
なんでもないんです……。
シタン 「 なるほど。
なんとなく理解出来ました……
あ、すみません。
先程詮索しないと言ったばかりなのに。
うーん、これは性分だな。
妻にも良く言われるんですよ、しつこいって。
それとあなたは口数が多いとも言われます。
自分ではそんなに多いとは思わないんですけどね。
しかし、そういうことならなおさら国に帰った方がいい。
やはりここはあなたのいるべきところじゃない。
エリィ 「 本営には戻ります。
でも、その後のことまでは……
シタン 「 悩んでいると……
エリィ 「 ええ……。
シタン 「 悩むのは当然です。
“私も以前はそうでした”。
エリィ 「 シタンさん……。
シタン 「 フェイには上手く伝えておきます。
さぁ、お行きなさい。
 
 

《MEMO》
出自に関するコンプレックスを垣間見せるエリィと、どこまでが本心なのか分からないシタン。
《アーネンエルベ》の可能性の見極めの為にフェイを監視するシタンだが、個人の感情としてはフェイを争いから遠避けたいという思いが伺える。

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ゲブラー艦目撃
 
フェイ 「 ?
あれは……?
シタン 「 あれは……どうやらアヴェの空中戦艦のようですね。
フェイ 「 空中戦艦?
アヴェにそんなものがあるなんて聞いたことないぞ。
シタン 「 もちろんそんな代物はアヴェにはありませんよ。
おそらくアヴェに駐留するゲブラーのものでしょう。
フェイ 「 ゲブラー?
シタン 「 神聖ソラリス帝国特設外務庁……通称ゲブラー。
フェイも聞いたことぐらいはあるでしょう?
アヴェの軍政に対して大規模な軍事援助をした組織のことを。
それがゲブラーです。
彼等がイグニスに現れたのはほんの数カ月前。
キスレブ帝国によって劣勢に追い込まれていたアヴェは彼等の助力を得て戦況を五分にまで回復させた。
そして現在着々とその領有を拡げ、そこに埋没している遺跡資源を獲得しているんです。
フェイ 「 爺さん達が話しているのを聞いたことはあるけど……

もしかしてエリィは!?
シタン 「 多分そうでしょう。
彼等は卓絶した科学力と軍事力を持った組織。
うわさでは彼等も遺跡資源を獲得する為に世界規模で活動しているということです。
それにしても、まさかあれほどの船を投入してくるとは……。
これは国境付近の小競り合いだけでは済まされなくなってきたな。
フェイ 「 じゃあ、あれはキスレブとの戦闘?
シタン 「 ええ、アヴェ領の北端で新たな遺跡が見付かったんです。
約五百年前に建てられた神殿らしき建造物の下にね。
ところが三週間程前にキスレブにその遺跡を制圧されてしまった。
おそらくはそれをめぐっての争奪戦でしょう。
 
 

《MEMO》
「約五百年前に建てられた神殿らしき建造物」については意味ありげながら作中出て来ず。
五百年前=ソラリス戦役時代の遺跡であることから、ラムサスはこれを《ファティマの至宝》と思いアヴェに入ったのだろう。

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