作中台詞集・3ダジル 〜 輸送船

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ダジル
 
フェイ 「 ……………
先生、話があるんだけど、いいかい?
シタン 「 ええ。
私はかまいませんが。
シタン 「 フェイ、それで話とはなんでしょうか?
フェイ 「 …………。
なあ、先生。
ヴェルトールのことなんだけど……パーツも見つからないことだし、あれ、直さなくてもいいんじゃないかなぁ。
シタン 「 修理しない?
それはまた、どうしてですか。
フェイ 「 あのさ、とりあえずダジルまでは来れたわけだろ?
もう、ヴェルトールは必要ないよ。
おれ、考えたんだけどさ、あの事件のほとぼりが冷めたら、ラハン村に戻って村の再建を手伝いたいんだ。
今のおれが出来ることってそれくらいだから…………。
シタン 「 ……………そうですね。
フェイがそうしたいのならそれもいいでしょう。
しかし、ヴェルトールはあの場所から移しておいたほうがいいと思いますよ。
フェイ 「 あいつを動かす?
なぜだい、先生。
シタン 「 これは、私の推測でしかないのですが……。
あの晩の事件は、ゲブラーの特務部隊がキスレブ軍のギアを奪ったことが原因なのではないでしょうか。
フェイ 「 特務部隊……エリィたちのことか!
シタン 「 そうです。
村で破壊された機体を調べてみてわかったのですが、ゲブラー兵の乗っていたギアはキスレブ製のものでした。
それも、キスレブ軍の追撃部隊が乗っていたものよりも新しい技術を盛り込んだ機体だったのです。
フェイ 「 新しい技術?
シタン 「 私が思うに、ゲブラー軍特務部隊の任務は、新型試作機の強奪。
特務部隊の任務失敗はすでに王都にも伝わっていることでしょう。
そして彼らは、キスレブの新型ギアの一部だけでも回収しようと、ラハン村方面へ調査隊を派遣するはずです。
フェイ 「 待ってくれ、先生!
村にはまだ、キスレブ軍がいるかもしれないじゃないか!
シタン 「 そうです。
そして、アヴェの調査隊とキスレブの追撃隊との間で小競り合いが起こるでしょう。
そして、彼らの求める新型機、ヴェルトールが原型をとどめた形で放置されているのが見つかれば……
フェイ 「 ヴェルトールをめぐって、両軍が激突することになる。
それも、ラハン村の近くで。
シタン 「 そういった事態を避けるためにもはやくヴェルトールをどこかに移動させた方がいいと思いますよ。
フェイ 「 でも、動かそうにも、直せないんじゃ……
シタン 「 確かにそうですが、ここでたそがれていても何の解決にもなりませんよ。
幸い、ここは遺跡発掘の拠点です。
何か情報があるかもしれません。
案ずるより生むがやすし、です。
 
 

《MEMO》
自分の犯したことから目を反らし逃げるのではなく、「為すべきこと」を模索し始まるフェイ。
フェイのこの覚悟は時に揺らぎながらも物語の終盤まで一貫し、そして後の人格統合の台詞へと繋がってゆく。

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グラーフとの邂逅
 
フェイ 「 何とか……倒せたのか?
グラーフ 「 ふははははははは
フェイ 「 な、何だ?
グラーフ 「 戦いを欲する血、やはり抗えぬようだな。
フェイ 「 …誰だ…!
 
…誰?
そうだ……俺はお前をよく知っている…
お前は殺したんだ…あの人を…………
この人を………
いや…殺したのは……
(違う…僕じゃない…僕は…!)
(“憶病者”……)
(……お前だよ………)
 
フェイ 「 お前は……ラハンの!
シタン 「 やはり……
グラーフ 「 我はグラーフ。
力の求道者。
フェイよ。
お前の力、ラハンでとくと見せてもらった。
フェイ 「 俺の力?
一体何のことだ!
グラーフ 「 我の目的遂行にはより強大な力が必要なのだ。
その力を目醒めさせる引き金として、我はかの地にそのギアを送り込んだ。
お前と接触させる為にな。
フェイ 「 引き金だと!?
じゃあ、あれはお前が仕組んだ事だったのか!?
グラーフ 「 そう。
近しい者の死。
それに対する無力な己。
そこから生まれる哀しみ、心の叫び、それこそが力の引き金なのだ。
フェイ 「 その為に……俺をギアに乗せる為だけに村を襲ったというのか!?
何故だ!
村のみんなを犠牲にしてまで……
グラーフ 「 知らぬな。
己が課せられた天命を全うせず、ただ日々暮らすばかりの下民外道がいくら死んだとて我は何も感じぬわ。
それに忘れたか?
村を滅ぼしたのはお前自身ではないか。
我は何ら手を下してはおらぬわ。
フェイ 「 違うっ!!
俺は村を、みんなを救おうと思っただけだ!
滅ぼそうなんてこれっぽっちも思っていないっ!!
グラーフ 「 果たしてそうかな?
お前は聞いているはずだ。
自身の本質、破壊を欲する欲動の声をな。
フェイ 「 うるさいっ!
たとえそうだとしても、その原因を作ったのはお前じゃないか!
お前さえ来なければ、村はあんな事にはならなかったんだ!!
グラーフ 「 ふん。今度は転嫁か。
成る程、いかにも “お前らしい” 台詞だな。
それもよかろう。
どのみちお前の本質は変わらんのだ。
フェイ 「 くっ……
俺の力が必要だと言ったな?
力を得てどうするつもりだ!
グラーフ 「 知れたこと。
母なる神を……滅ぼすのだ。
フェイ 「 か、神を滅ぼす?
グラーフ 「 そうだ神を滅するのだ。
それが我等が目的。
我等が天命。
フェイ 「 ふざけるな!
俺はそんなもんに手を貸す気はさらさらない!
神だか何だか知らないが、そんなに滅ぼしたきゃお前一人で殺ればいいっ!!
グラーフ 「 ふふふふ。
……似ておるな。
父親に。
フェイ 「 父親?
親父?
お前、親父を知っているのか!?
グラーフ 「 あれは……心地よい絶叫だった。
我は感じ入った。
死の際の絶叫とはかくも美しいものかとな。
フェイ 「 親父に何をした!
親父との間に何があったんだ!!
グラーフ 「 ふん。
知りたいか?
だが今のお前がそれを知ったとて、仕方の無い事だ。
フェイ 「 何っ!?
グラーフ 「 お前のその力、未だ我の目的に能わず。
能わぬものは能うまで試練を与えるが道理。
フェイ 「 な、何だ?
「 !!
何だこいつは!?
グラーフ 「 さあどうする?
フェイ。
ここで倒れればそれまでのこと。
何も知らぬが故に得られる幸せもあろう。
だが、お前が真に望むはそうではなかろう?
お前が望むもの……真実を知りたくば、他を滅し、己が力で我の高みまではいあがってみせい!
そのときこそお前は、死への絶叫と引き替えに失われた全てを得ることになろう!!
ふははははーっ!!
フェイ 「 ま、待てーっ!
まだ話は終わっちゃいないっ!!
 
 

《MEMO》
グラーフは神を「母」と捉えているが、それは最終的な神を「エレハイム=ミァンを生み出す運命 (システム)」と見ている為か。
「“お前らしい”」という台詞は、フェイの人格乖離の原因を知るからこそのものだろう。

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天帝回想
 
フェイ (…………あ……)
グラーフ 「 我等が一つとなれば……
カーン 「 …このような形で貴様と再会するとはな…。
これも運命 <さだめ> か……。
皮肉なものだ。
…だが……此奴だけは、渡すわけにはゆかん。
イド 「 ………フッ………
カーン 「 例え……この身砕けようともな……!
 
シタン 「 どうですか?
フェイ?
ちゃんとやすめましたか?
フェイ 「 ……え?
ああ……まぁ……
シタン 「 いやぁ、うかつと言えば、うかつでした。
キスレブの極秘試作機じゃ、アヴェ側も当然血まなこで探していたんでしょう。
フェイ?
怪我でもしました?
元気ないですね?
フェイ 「 いや……ちょっと……ね……
シタン 「 ……あの黒衣の男、……あなたのお父さんがどうとか言っていた、その事ですか……
フェイ 「 ああ、それもあるけど……
それより奴の言ったこと……ラハン村の……あの事が、俺をギアに乗せるために仕組まれた事だった、ってのが、気になって……
シタン 「 あなたをギアに乗せるために……ですか……
フェイ 「 先生、俺は村が無くなるまで、自分自身に何の疑問も抱かず暮らしてきた。
でも、今は違う。
俺は……自分が何者なのか知りたい。
こんな気持ちは初めてだ……
シタン 「 何か事を起こすにしても、囚われの身ではどうしようもありませんよ。
とにかくもう少し休みましょう。
そうすれば、いくらか気持ちの整理もつくでしょう。
「 フェイ、お父さんのことが気になりますか?
フェイ 「 重傷を負った俺が奇妙な仮面の男にかつぎ込まれた事、うわごとで親父を呼んでいた事……後でおばさんから聞いただけだ。
親父についてはそれで全部。
自分では何一つ覚えていない。
だから、逆にさびしいとか……そんなことはないんだ。
先生、俺はどうして思い出が無いことを今まで気づかなかったのかな?
シタン 「 ………
とにかく今は休みましょう。
フェイ 「 そうだな、休もう。
シタン (……………あれは間違いなくあの男だった……
……ただの偶然ではない、な……)
(やはり迫っているのか?……福音の劫 <とき> …が……)
 
カイン 「 そう、福音だ。
神の眠りと共に楽園から追放され、異郷の民として、過酷な地上で生きることを余儀なくされた我等ヒト。
地に満ちた我等が再び神の御下、楽園へと回帰し、永遠の生を得る。
それが福音の劫 <とき> だ。
その劫 <とき> が迫っておる。
我等ガゼルはそれまでに神の眠る地を見つけだし、神を復活させねばならぬ。
それが叶わぬ時は……
シタン 「 叶わぬ時は?
カイン 「 我等は原初からの運命 <さだめ> により……
 
シタン (滅亡しよう、ですか……陛下……)
 
 

《MEMO》
記憶がないことに今まで疑問を持たなかった自分に不自然さを感じるフェイ。それは3年前に生まれたばかりの幼く新しい人格の為か、それとも監視者であるシタンがそう仕向けていたものか。

天帝カインが《神の眠る地》=マハノンの場所さえ知らない一方、カレルレンとミァンは既に発見し内部にまで足を運んでいる (ラムサスが生まれたのはマハノン内のカレルレン研究施設)。そのことからも、この2人の計画の中では天帝カインとガゼル法院を最初から切り捨てるつもりだったことが伺える。
この時点では、カインは《アーネンエルベ》に大して期待することもなく、滅びを受け入れようとしているかに見える。

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潜砂海賊ユグドラシル
 
バルト 「 ビンゴ!
情報通りだな。
アヴェの輸送船……か
載ってる奴は……
間違いない!
キスレブの新型!
例の強奪された奴だ!!
どっちにしろ、シャーカーンの野郎にみすみす渡すこたぁ、無い、な……
ラトリーン!
ラトリーン 「 A砲塔 <アントン> とB砲塔 <ベルタ> 、ハッチ開放から方位盤作動まで20秒でいけます!
バルト 「 バンス!
バンス 「 流砂サウンド以外、な〜んも聞こえません。
怪しい電波も無し!
バルト 「 マルセイユ!
マルセイユ 「 ミロクの大将の小隊が既にカタパルト下で待機中、浮上後1分で全機展開できます!
バルト 「 よぅっし!
バトコンレベル1発令!
部下 「 表層打撃線区、ようそろ!
「 砂雷戦区、ようそろ!
「 対ギア戦区、ようそろ!
「 航法区、機関区、ようそろ!
メイソン 「 わ、若!
何事でございますか?
い、今の警報は……
シグルド 「 若!
お待ち下さい!
バルト 「 全艦戦闘配置!
浮上航行、排砂ポンプ始動!
浮上と同時に右舷同行砲戦に入る!
シグルド 「 若!!
メイソン 「 わ、若!!
バルト 「 ツムリを右寄りにとれ!
上は風が強い、あおられるぞ!
……ジェリコ!
舵をこっちに渡せ!
 
シタン 「 あ、あれは……
……潜砂艦……噂の砂漠の海賊か!
 
ラトリーン 「 交互射撃初弾、A <アントン> B <ベルタ> 共に挟叉!
修正値計算中!
バルト 「 よっしゃあぁぁ!
第二射から斉射 <サルヴォー> に切り替え!
奴の足を止める。
ケツを思いっきりひっぱたいてやれ!
メイソン 「 お待ちください、若!
ひょっとしてあれは軍艦にあらずただの御用船では……?
バルト 「 だまってろ、爺!
軍艦であろうとなかろうと、新型のギアを積んでいることに変わりはねぇ!
ラトリーン!
派手に叩き込んでやれ!!
 
シタン 「 なんと!
「このかたむき具合から察するに…どうやら砲撃で艦底に大穴が開いちゃったみたいですね。
このままでは沈没します。
おそらく数分のうちに。
フェイ 「 数分……先生!!
シタン 「 鍵が……おーいだれか……うわ!!
フェイ 「 行こう、先生。
 
 

《MEMO》
砂漠のシャチ、バルト登場。お小言係はシグルドとメイソンに任せ、部下はしっかり若の命令通りに動く所がユグドラシルの結束力か。

ちなみにラトリーン=砲撃手・バンス=ソナー係・マルセイユ=通信手・ミロク=ギア部隊長・ジェリコ=操舵手。
ビンゴという操舵手見習もいるが、台詞冒頭の「ビンゴ」は「当たり!」の意味で使っているのだろう。

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