接触者・対存在・補体
- 接触者
【 『接触者』原初のアベル | 歴代『接触者』 | 来るべき神人 | 《波動存在》への供物 】 - 対存在
【 『対存在』の形成 | 嫁せられた役割 】 - 『接触者』と『対存在』
【 『接触者』の覚醒 | 二者の転生 | 永遠なる《母》エレハイム 】 - 補体
【 エレハイムの分化 | 刻の管理者 | 歴代ミァン 】
接触者 | |||||||||||||||
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『接触者』原初のアベル【 ゾハル・デウスシステム 】参照星間戦争時代、宙域紛争を集結させるべく大規模な戦略兵器《恒星間戦略統合システム デウス》が開発され、その主動力炉として無補給疑似永久機関《事象変異機関 ゾハル》が採用された。移民惑星の工業衛星内でデウスとゾハル・両システムの接合実験が開始される中、ゾハルの事象変異により《セフィロートの道》が拓け、高次元より《波動存在》が4次元宇宙に降臨する。 本来ならば知覚出来ない《波動存在》を偶然その場に居合わせた少年・アベル (フェイの前世) が観測・認識し、その観測行為によって《波動存在》は4次元宇宙内で知覚出来る存在へと変化し、ゾハルという肉体 (物質の檻) に捕われた。 この時《波動存在》を観測したアベルに《波動存在》とゾハルの力の一部が流れ込み、アベルは『接触者』に定められる。 《波動存在》は高次元 (《波動の場》) への回帰を望むものの、ゾハルという肉体に捕らえられている限りそれは叶わない。 『接触者』アベルはゾハルを破壊し《波動存在》を解き放つ為に、1万年に渡り転生を繰り返していくことになる。 |
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歴代『接触者』
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来るべき神人考察《アーネンエルベ》とは、天帝カインがゾハル及びデウスを破壊する可能性のある『接触者』のことを「この世に生まれた人々と共に新たな地平へと歩み進む、来るべき神人」として呼んだものであるが、『接触者』の転生はヒトにとっての大きな転換期に行われており、またその時代においてのキーパーソンとして重要な役割を負っている為、それはあながち天帝カインによる例えだけのものではない。『接触者』の転生がヒトの転換期に行われるのは、《波動存在》の望むゾハルの破壊が《恒星間戦略統合システム デウス》の復活時でないと成し得ない為と推測される。 逆に言えばデウス復活の望めない時期 (全ての合一が成し得ない時) に、それを破壊する為の『接触者』だけが存在しても意味がないのである。 『接触者』がキーパーソンとなる理由も、『接触者』自身が望む望まざるに関わらず、その時代において (《波動存在》の事象変異により) デウス復活を促進する役目を嫁せられている為だろう。 実際フェイの周りには《アニマの器》同調可能者が数多く集まり、同調を果たしていなかった残る《アニマの器》を完成させ、デウスの元へと導くに至った。 知能レベルがピークに達した一方、遺伝子に欠陥を持っていたゼボイム時代の『接触者』キムが医者であり化学者であり、宗教による精神性の高さや支配からの解放が求められていたソラリス戦役時において『接触者』ラカンが画家であり僧兵であり、長引く戦乱の中、力が求められるイグニス戦役において『接触者』フェイが武術に秀でていたのも、偶然だけではないと思われる。 |
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《波動存在》への供物考察《波動存在》の降臨する瞬間、《恒星間戦略統合システム デウス》と《事象変異機関 ゾハル》の接合実験時に、少年アベルは「偶然」その場に居合わせる。軍の中でも機密となっていた接合実験に、ごく普通の民間の少年がたまたま紛れ込んでしまったとは非常に考えにくく、その理由もはっきりと描かれてはいない。 むしろ「アベルは『偶然』を装ってその場にいなければならなかった」と考えた方が自然ではないだろうか。 ソラリス戦役終結後、神を求めたカレルレンはマハノンを訪れ《ラジエルの樹(人工電脳ラジエル)》に触れ、《波動存在》とその高次元への回帰の望みを知ったとされている。 ということは、《人工電脳ラジエル》には《波動存在》とその目的・『接触者』等に関する正確な情報が収納されていた=星間戦争時代の人類は《波動存在》についての詳細やアベルとの関わりを熟知していたものと思われる。 《波動存在》の降臨は偶発的なもので、たまたまアベルが何らかの別の理由を伴ってそこにいた──ということも考えられなくはない。 例えばアベル自身がゾハルと同調出来る素質を持った人間として、接合実験に必要とされたものかもしれない。 しかし通常の人間には知覚することが出来ない《波動存在》をアベルが観測した以上、「アベルは《波動存在》の降臨をある程度予想してそこに配置されていた」と考えた方がしっくりいくように思われる。 接合実験が行われた時代の人々は《波動存在》がどのようなものであるかをある程度知っており、接合実験時にそれが降臨する可能性を知っていた。そしてアベルは《波動存在》を観測する為に (あるいはそのように創られた存在として) その場に居合わせた──そう考えることは出来ないだろうか。 アベルは《波動存在》を捕らえる為の供物であり、《波動存在》降臨以前から『接触者』として、最初から人の手により定められていた存在だったのかもしれない。 |
対存在 |
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『対存在』の形成【 ゾハル・デウスシステム 】参照《事象変異機関 ゾハル》の瞳状部分 (ゾハルの中枢) に埋め込まれた第8世代生体人工知能型コンピュータ・《生体電脳カドモニ》は3つの部位からなる生体素子を備え、各部は《中枢素子ペルソナ》・《生体素子アニマ》・《生体素子アニムス》とそれぞれ呼称される。《波動存在》は『接触者』アベルの観測行為により、ゾハルに捕らえられると同時にアベルの深層意識を反映し、《母》の特性を決定付けられた。 《波動存在》の《母》の特性により、《生体電脳カドモニ》はアベルのイメージを投影し、ヒト型生体素子《中枢素子ペルソナ》よりオリジナルエレハイムを形作る。 以降エレハイムと呼ばれる存在は、オリジナルミァンによる主体 (エレハイム) と補体 (ミァン) の分化を経て、『接触者』の『対存在』として同時期に転生を繰り返していく。 『接触者』の名がその時代時代で異なるのに対し、エレハイムはいつの時代においても「エレハイム」の名で呼ばれている。 それはアニムスであるヒトの無意識の記憶に刻まれた《母》の名であるからだろう。 『対存在』は本来『接触者』より定義付けられた《母》の役割を果たす為に存在し、《子》である『接触者』を守る為ならば自己犠牲をも厭わず、いつの時代においても自己犠牲的な性格を持って『接触者』を守る為に死亡している。 |
嫁せられた役割考察ゼボイムのエレハイムより、エレハイムは『接触者』と同時に転生を行い、『接触者』と『対存在』という間柄において本来あるべき母子関係は恋人関係として発露するようになる。『対存在』エレハイムは『接触者』に対し《母》の役割を果たす為に存在し、その為にヒトを管理する補体のミァンと分化したものであるが、デウスのパーツとして必要な生体素子の要・《中枢素子ペルソナ》でありながらデウスの破壊者となる『接触者』と同時期にしか誕生出来ないという状態は、《恒星間戦略統合システム デウス》にとって非常に不都合があるように思える。 逆にこの状態は、デウスの完成とその破壊を望む《波動存在》にとって都合がいいとも言える。 《中枢素子ペルソナ》からエレハイムが形作られたこと自体は偶然だったのかもしれないが、このエレハイムを『対存在』とすることにより、『接触者』の存在しない時期にデウスの完成を成し遂げることは不可能となる。 またその時代の『対存在』と『接触者』が (母子関係として・もしくは母子相姦関係として) 惹かれ合えば、いずれデウスに帰還する『対存在』を解放する為に『接触者』自らが積極的にデウスの破壊へ向かうことは容易に想像出来る。 『対存在』は《波動存在》の目的の上で有効に使える駒だったとも言えるだろう。 全ては神の謀 < はかりごと > ──《波動存在》の求める全ての合一とその破壊、そして解放に向けてのシナリオの為に『対存在』は生み出されたものと思われる。 |
『接触者』と『対存在』 |
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『接触者』の覚醒考察「『接触者』の覚醒」という言葉は作中何度も用いられているが、具体的にその「覚醒」がどのような過程を経て行われ、またどのような状態を指して「覚醒」と呼ぶかは曖昧なままである。「『接触者』の覚醒」にはどのような要素が必要とされていたのか。 また「覚醒」によって得られる能力はどのようなものだったのか。 ソラリス戦役において、『接触者』ラカンはゾハル及び《波動存在》との不完全な接触=不完全な覚醒を経てグラーフへと変貌する。 この時完全な覚醒を得られなかったのは『対存在』エレハイム (ソフィア) を欠き、かつラカン自身が『接触者』として未成熟だった──『対存在』の《母》の特性に対応すべき《父性》を持ち得ていなかった為とされている。 一方ミァン (M0997) として覚醒したカレンは、フェイを『接触者』として覚醒させる為に《アニマの器》との同調率が高い者との精神接合実験を開始する。 《アニマの器》との同調率が高い者とは、ヒト (アニムス) の中でも特にアニムス原体に近い能力を持つ者ということだろう。 カレンによって集められた精神接合実験の被験体はフェイとの同調に耐え切れず死亡するが、後に (恐らくは《波動存在》の事象変異により) 《アニマの器》同調可能者はフェイの周囲に自然に集まり、フェイは《波動存在》との接触を果たし覚醒する。 これらのことより、『接触者』の覚醒は全ての合一に必要不可欠なペルソナ・アニマ・アニムスの各生体素子 (もしくはそれに近いもの) との接触、及び同調によって促されるものと推測される。 『接触者』をシステムの破壊者として望む天帝カインがヒュウガ (シタン) をフェイの側に置いたのも、ヒュウガが特務遂行官 (守護天使) という任に付いているからだけではなく、ヒュウガ自身も『接触者』の覚醒を促す存在──《アニマの器 (アシェル)》との同調を果たした者であった為と思われる。 『接触者』がただ転生しただけでは『接触者』本来の能力を使えず、覚醒に至るまでに過程を経なければならないのは、全ての部品が揃い合一が為されるまではその破壊の力を振るえないようにする為の、いわば安全弁なのだろう。 また『接触者』自身の《父性》も覚醒に求められているということは、『対存在』との関わり (疑似母子関係・恋人関係) によって互いに影響を受け合い、依存心を持たせる必要があった為と推測される (【 嫁せられた役割 】参照)。 最も最良な「為されるべき時」に「為すべきこと」を担う為だけに、『接触者』は『対存在』と共に幾重にも制限を受けていたと言える。 人格を統合させたフェイは《波動存在》と再び接触し、ヴェルトール2はゼノギアスへと変容する。 ゼノギアスは4次元宇宙で絶対の存在であるはずのゾハルから《波動存在》を解放し、《波動存在》が高次元へと回帰した後も稼動し続け惑星に帰還する。 覚醒した『接触者』の能力は、ゾハルにも《波動存在》にも依らない独立した能力──個体で有する事象変異能力と推測される。 |
二者の転生考察『接触者』と『対存在』は転生を繰り返しているが、その肉体は一般のアニムス (ヒト) の中より生まれているにも関わらず、二者の回想に出てくる時代時代の『接触者』と『対存在』は、常にほぼ変わらない容姿をしている。それは『接触者』と『対存在』の主観 (互いを互いと認識している為の記憶の補正) だけではないだろう。 エリィとフェイを見てラカンの転生と気付いたメルキオールやフェイをキムと認識するエメラダの言動・そしてニサンのソフィアの肖像画とソラリス人種である両親と異なる容姿を持つエリィ自身等から、『接触者』と『対存在』は時に両親となったアニムスの影響を全く受けずに転生を繰り返しているものと思われる。 人の容姿は塩基配列によって決められるが、その構成自体は人種に関わらずほぼ同じであり、多様な組み合わせによって様々な容姿が生まれる。 この組み合わせを操作することが出来れば、両親の容姿に関わらない同一性を『接触者』と『対存在』に持たせることも可能なのだろう。 ソフィアは若干エリィと髪の色が異なっているが、これは元となった遺伝子自体が全くの同一ではない為に生まれた違い──いわば誤差範囲であるものと思われる。 二者の転生は肉体だけでなく、正確な記憶をも伴っている。 作中フェイはそのことに触れ、それらの記憶はイントロン情報 (遺伝子の空白部分) に『接触者』の能力を固着させるものとして刻印されていると語る。 ヒトの肉体そのもの (遺伝子・記憶) を構成しているものも大まかに解釈すれば「情報」であり、《波動存在》やゾハルはその情報さえも操ることが可能と思われる。 |
永遠なる《母》エレハイム考察【 時代年表 】 EPISODE III参照ゼボイムのエレハイムは先天的な遺伝子欠陥を負っており、生殖能力を欠いていた。ゼボイム時代は遺伝子異常が多発していた為、キムはそのことをヒトの未来への憂いとして受け止め、ナノマシン群体エメラダを誕生させる。 しかし本来の遺伝子にさえ影響を受けない、容姿や記憶までをも継続させる二者の転生において、ゼボイムのエレハイムだけが時代を反映して遺伝子欠陥を負っていたとは考えにくい。 むしろエレハイムは『対存在』として、最初から子を生せない肉体を持つように定められていたのではないかと推測される。 『対存在』は『接触者』に対し、《母》の役割を担う為に存在している。 しかしその《母》の役割は実際に『対存在』が『接触者』を生殖によって生み出すというものではなく、あくまで擬似的な母子関係──依存や回帰願望・保護意識といった精神的な繋がりでしかない。 よって『対存在』が肉体的な意味で子を生してしまった場合、この二者の関係が脆くも崩れる危険性があることは想像に難くない。 『接触者』の《母》であり続ける為に、『対存在』は「母」になることを絶対的に禁じられている存在なのだろう。 ゼボイムのエレハイムの生殖能力の欠落は「欠陥」ではなく、そうした『対存在』の特性による「仕様」──プログラムであると思われる。 |
補体 |
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エレハイムの分化 |
刻の管理者【 ゾハル・デウスシステム 】参照デウス暴走時、オリジナルエレハイムの人格に当たる基幹プログラム《Elehayym》が自己修復プログラムを統括する《System HAWWA》に書き換えられ、エクソン置換 (遺伝子内部での生体構成情報の組み替え) によってオリジナルミァン・ハッワーに変容した。ミァンは本来のエレハイムのもう1つの姿であり、デウス統御モードとして行動を取るようプログラムされている。エルドリッジの爆破により惑星墜落を免れ得なくなったデウスは、全壊を回避する為にゾハルから《生体電脳カドモニ》を分離させ、《原初の地》へ軟着陸させた。 この《生体電脳カドモニ》よりオリジナルミァン・ハッワーが分離し、デウスの再構築計画を開始していくことになる。 オリジナルミァン・ハッワーは《生体素子アニムス》から天帝カインやガゼル法院 (アニムス原体) を生成した後、《生体電脳カドモニ》の生体素子維持プラントに戻り、『対存在』としてのエレハイムと次代のミァン (M0000) を刻の管理者として生み出した。 エレハイムが『対存在』としての役割を負っている以上、デウスの復活を促進するものとしてミァンが同時に存在する必要性があった為である。 ミァンはデウスのプログラムの1つであるが故に自ら死ぬことは出来ず、全てのアニムスの女性に宿るミァン因子の覚醒によって連綿とその存在を継続させていく。 ミァンは1万年の間に998回の覚醒を繰り返している。 時には複数のミァン因子が同時覚醒することもあり、複数のミァンが同時期に存在するケースもあった。ゼボイムのミァン姉妹は双児が同時にミァンとなった稀な例である。 主体のエレハイムに対しミァンはあくまで補体であり、そのままではデウスに帰還することは出来ない。デウスに帰還する為には、エレハイムがミァンとして覚醒する必要がある。 エレハイムのイントロン情報に描かれているウロボロス環が断ち切られた時、 “最後のミァン” が覚醒し (《Elehayym》が裏返り《Myyah ele [ミァン、ここに存在せり]》になる)、デウスは《福音の劫》を迎える。 |
歴代ミァン考察補体であるミァンはアニムスの女性の中からランダムに覚醒しているにも関わらず、M0998・ソラリス戦役のミァン・ゼボイムのミァンはオリジナルミァン・ハッワーと同じ容貌を備えていた。オリジナルエレハイムはエクソン置換=構成ゲノム自体の置換を行うことにより、オリジナルミァンへと変容した。つまりミァンという生体素子は、エレハイムとも異なる独自の遺伝子情報 (容姿) を持つ存在と言える。 “最後のミァン” として覚醒したエレハイムが金褐色から紫紺の髪へと変貌したように、ミァンとして覚醒した女性らもエクソン置換によって遺伝子レベルで「ミァン」へと変わっていったのだろう。 ただしエレハイムの覚醒=エクソン置換が一瞬で行われたのに対し、M0998が覚醒前に出逢っていたラムサスと恋人関係を継続していた (「別人になった」と認識されていなかった) ことから、エレハイム以外の女性ではそうした変換はごく緩やかに行われるものと推測される。 フェイの母であるカレン (M0997) の容姿が「ミァンらしく」なかったのは、ミァンとして覚醒してから死亡に至るまでが10ヶ月と短く、遺伝子レベルで「ミァンに成り切れていなかった」為と思われる。 |